TAP Lab.川島慶樹インタビュー 誰かが強く欲しいと思ってる限り、どこかに必ず同じ思いのひとがいる。
そこにある種の共同体(Community of Interlest)がうまれる。

TAP Lab.がおもしろいと判断したら、TAP Factory で作って世の中に問いかける。

実例として、少しとんがったビンテージ家具のギャラリーがある、スタイリッシュな感じのものだけを扱っていて豊富な知識をもとに重要で貴重な存在となったものたちを明確なコンセプトで紹介している人がいる、だけどそれだけでは気が済めへん、もの作りへの欲望があるじゃないですか。そこでビジネスとしては難しいけど、彼らが本音で感じる温度に合ったものを具現化していくっていうことをTAPとしては共有したいわけです。基本的にはプロダクトデザイナーとかに頼むような形ではなく、 僕らがおもしろいと興味を持てば、お手伝いするという感覚です。

主体となるTAPが興味を持つ人やものってあると思う。誰かが強く欲しいと思ってる限り、どこかに必ず同じ思いの人がいるわけで、そこにある種の繋がりが生まれる。つまり興味の共同体(Community of Interest)というコミュニティーが出現するわけです。
言いかえれば、TAP Lab.の役割は売れるものを考えるときに「プロダクトデザイナーを呼んできて、売れる商品を開発しましょう」っていう話じゃない。これがいちばん大事です。

たとえば、市井の人ですごく音楽(オーディオ)のことが得意な人がいるとして、強烈に欲しているものがあるが市販はされていない。でも彼はプロダクトデザイナーじゃないから、製品を作る立場にない。それをTAP Lab.がおもしろいと判断したら、TAP Factory で作る。それが商品として成立するかはとりあえずKioskを通じてリリースして、世の中に問いかける。それがTAP Lab.が目指すもうひとつ役目でもあるわけです。 

名もない人がデザインした優れもので、世の中から消えていきそうなものを掘り起こす。

僕個人のスタートは花の椅子のリリースやけど、いまTAP Lab.でREPRODUCTS PROJECTを進めていて、次はこのアルミの椅子を作ろうと思ってます。たぶん名もない人がデザインしたアルミの折りたたみ椅子で、以前に僕がヨーロッパの骨董屋で見つけ、自腹でユーロ払って買ってきました。これを本気でフルコピーします。

いつか誰かがデザインして、たぶん量産されて、世の中になんとなく残ってる。誰が作ったかわからへんけど、いま改めて同じものを作ろうと思ったら大変なことです。だけど、そういう古いものにちょっと惹かれて、もう1回きちんと再現するという感じ。細かいとこまでコピーするっていう感じのことをしたいんです。材料は変えてとかしながら、いいなと思ったのを再発見してリメイクします。

僕自身、いまの世の中にデザインされたものであまり欲しいもんないんです。で、自分がデザインしたからといって欲しいわけじゃなく。必要なものはあるけど、探し始めると欲しいものがないっていうこともある。なんかデザインされすぎてたり、むしろデザインされすぎてることがいちばんの問題やったりして。その基準はどこにあるのかちょっとわからへんけど。

世の中にリリースされて40年とか50年とか長く続く優れたものっていっぱいある。誰が作ったか、それすらわからへんみたいなもの。それがいまの時代に必要かは別として、とっくに市場にはなくて、世の中からそのまま消えていきそうなものを掘り起こす感じでもう1回作りましょうというリプロダクトです。

優れてるけどもう必要ないから消えていくものもあるけど、優れてて必要で残るもののちょっと下ぐらいで、 魅力的だけど世の中から消えそうなもの。うるさくなくて、僕が愛せるもののひとつという感じでなんか捨てられなくて、ずっと使ってるもの。 いつも目的が違いながら、ずっと居るっていう。ある時は調理台の代わりになってたり、でも捨てられんとずっと居る。たまたまそこに居たから、なんかフックするもんがあったっていうだけの話やけど。それが自分にフックした要素が何かというのは自分でもがあんまりわからへんし、ピンときてへん。 誰かが優れたデザインとして解説してるわけでもないし。

意図的に市場へ向けてデザインされたものは、なぜそれが優れてるかとか、一生懸命みんな解説するじゃないですか。 誰かが非常にわかりやすい文言でちゃんと歴史に残るように解釈してたり、いっぱいそういうことがあるわけです。 たとえばこのアルミの椅子、何もないでしょ。僕も語るほどの何かがあるわけじゃない。でもちょっとここの機構がよくできてるとか。別のプロジェクトで折りたためるお好み焼き屋さんのテーブルみたいなものを作ってるけど、プロダクトしていく中に市井の人たちが必要とするアイデアとかデザインが詰まってるわけですよ。 そういうことを発見して、再び製品にして世の中に問いかけてみたいという感じです。

2023.7  TAP CEO 川島慶樹

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